恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
その後、料理に舌鼓を打った。

友人の帰国祝いだからと言って頑なに料金を受け取ろうとしない峰岡専務に、ここは社内だからと説き伏せて支払った。

もし今日の件がどこかで漏れた際に大切な旧友を窮地に陥れたくはないと藤宮くんも強く主張していた。

食事を終え、峰岡専務に視線を向けた藤宮くんが口を開いた。


「今日のもてなしは有難いが、帰国祝いに眞玖とふたりの時間がほしい」


「そうか、ちょうどいい。俺は今から出かける予定がある。長谷部、責任をもって藤宮副社長をお見送りしてくれ」


唐突な藤宮くんの発言に、ニッと口角を上げた専務が即座に対応する。


「ち、ちょっと待って」


「業務命令」


焦る私に峰岡専務がきっぱり言い放ち、席を立つ。

そして爽やかに片手を挙げて、扉から出ていく。

峰岡専務と入れ替わるように入室した鹿賀さんが、手際よく空になったお膳等を回収し、再び退出していく。

テーブルを挟んで真向かいのソファに座る藤宮くんを直視できない。


「……宰に聞いたかもしれないが、一旦アメリカに戻る」


沈黙を打ち破るように、藤宮くんの低い声が響く。

思わず視線を向けた私を真っすぐに見据え、彼はテーブルに片手で頬杖をつく。


「今回はすぐに帰国する予定だから、ちゃんと待ってろよ?」


軽く身を乗りだした藤宮くんが右手を伸ばし、食事のため緩くうなじで結っていた私のシュシュを骨ばった指で外す。

はらはらと背中と顔周りに落ちた髪を、緩慢な動作で梳く。
< 48 / 156 >

この作品をシェア

pagetop