恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
「行くよ」


返事に窮する私を尻目に、藤宮くんは自身の指と私の指を絡めて歩き出す。

会場を出て、ホテルの駐車場に向かう間、彼の険しい表情は一切崩れなかった。

謝らなくてはと思うのに、彼の纏う硬質な雰囲気に呑まれ、声が出ない。


「乗って」


淡々と促され、おずおずと扉が開けられた車に乗りこむ。

車に疎い私でもわかる濃紺の高級外車に緊張しつつ、助手席に座った。

運転中、彼はずっと無言だった。


「眞玖、降りて」


車を止めた彼がやっと声を発した。

どうやらマンションの駐車場のようだ。

彼の自宅なのだろうか。

藤宮くんの渡米前は彼の車に乗ったり、自宅を訪れたりはしていなかった。

藤宮くんの帰国後、峰岡専務が自身の自宅と彼の自宅はとても近いと話していた記憶がある。

専務がひとり暮らしをしているマンションは都内の高級住宅街だ。

バッグの持ち手を強く握りしめ、降車した。

車を降りた彼が、通路脇に立った私のもとに長い足で近づいてくる。

骨ばった長い指が私の指に絡められ、ギュッと力が込められた。

伝わる体温に心が乱れ、反射的に藤宮くんを見上げるが、整いすぎた面差しからは感情が窺い知れない。

広い駐車場を足早に通り抜け、エレベーターホールに向かう。

ルームキーがないとエレベーターに乗れないという徹底したセキュリティに驚きつつ、足を進める。
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