恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
やってきたエレベーターに乗るが、彼は相変わらず言葉ひとつ発しない。

無言の圧力と気まずさを謝罪以外で和らげる方法がわからない。

ポーンと場に不似合いな明るい音が響き、最上階で扉が開く。

目の前に広がるフロアにはひとつしかドアが見当たらない。


「あ、あのここって……」


「自宅、ちなみにこの階には俺の部屋しかない」


抑揚のない声で返答し、カードキーで玄関ドアを解錠する。


信じられない、と口にしかけた感想を慌てて呑みこむ。


「入って」


「お、お邪魔します」


広い玄関には真っ白なタイルが敷き詰められ、すぐ近くにはシューズインクローゼットがあった。

磨かれた玄関にそっと足を踏み入れた途端、私の背後で彼がドアを施錠した。


「眞玖」


突如絡めたままだった指を強く引かれ、体が反転する。

センサーで点灯した仄かなダウンライトの明かりが彼の端正な容貌を照らす。

玄関ドアの冷たく固い感触が背中に伝わる。

突然の出来事に目を見開いた瞬間、顔を傾けた藤宮くんに荒々しく口づけられた。

呼吸さえも奪い取られそうな深いキスに頭の奥がジンと痺れる。

お互いの体の隙間が消えるくらい強く抱きしめられ、彼の香りに包み込まれる。

何度も角度を変えて続けられる甘く深い口づけに息苦しささえ感じる。

震える手で何度胸を叩いても、力強い腕は一向に緩まない。
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