私達、犬猿の仲ですよね? 原作知識なしの悪役令嬢が許嫁解消したら、執着ツンデレ系の第二王子から求婚されました!
「ちょ、ちょっと。何? 怖いから、こっちに来ないでよ!」
「俺は本気だ」
「一定の距離を保っていても、伝えられるでしょーが!」

 ーーこいつとゼロ距離なんて、冗談じゃない! 

 移動式の椅子に座っていたのをいいことに、私は文句を言いながらコロコロと音を立てて後方に下がる。
 レオドールはこっちに向かって進んでも縮まらない距離に苛立ちを隠し切れない様子で、表情がどんどん険しくなっていく。

 ーーなんでこいつ、こんなに怒ってるの? 彼の求婚を断ったから? 受け入れるのが当然だと思っていたなんて、自意識過剰にも程があるでしょ!?

 今すぐ転移魔法を使って、自宅に逃げ帰りたかったが……。

 残念ながら魔力は、すっからかん。
 こんな状態で転移魔法なんて発動させれば、命にかかわる。

 私はどうにかして、こいつの前から魔術を使わずに姿を消す必要があった。

「エルネット」
「ぅ……っ!」

 低い声で大嫌いな人間に名前を呼ばれた瞬間。
 ゾワゾワと背筋が凍るような寒気と背中の痛みを感じた。
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