私達、犬猿の仲ですよね? 原作知識なしの悪役令嬢が許嫁解消したら、執着ツンデレ系の第二王子から求婚されました!
「あ、あのさ。あいつから……求婚、されたんだけど……」
「ああ……。レオドールはエルネットが、ずっと好きだったからね」

 私がすべてを説明しなくても、元許嫁は察してくれたようだ。
 彼は当然のようにそう告げると、どこか困ったように眉を伏せた。

「いやいや。なんの冗談? だって私達、犬猿の仲なのに……」
「また、面白い単語を使っているね」
「あ、ごめん。ええと……めちゃくちゃ不仲でしょ?」

 困惑しすぎて日本のことわざがここでは通用しないのを、すっかり忘れてた。
 慌てて言い直せば、アルベールは呆れを隠さずに言葉を紡ぐ。

「喧嘩するほど仲がいいって、言うからね」

 皇太子はどこか寂しそうな顔を浮かべ、私達の関係をそう結論づけた。
 どうやら彼にとってこの展開は、意外性のない状況であったようだ。

「こんなこと、アルベールに相談するべきではないって、わかってるんだけど……」
「うんん。頼ってくれるのは、すごく嬉しいよ」
「本当?」

 彼は私に向かって優しく微笑むと、どこか遠くを見つめながら告げた。
< 56 / 241 >

この作品をシェア

pagetop