私達、犬猿の仲ですよね? 原作知識なしの悪役令嬢が許嫁解消したら、執着ツンデレ系の第二王子から求婚されました!
 相手が第二王子じゃ、口出しなどできるはずもなく。
 彼は堂々と空き部屋に私を引っ張り込むと、鍵をかけて壁際に追い詰めた。

「何す……!」
「忌々しい……」

 左手で壁に手をついた彼は、私の胸元を覗き込んで鼻を鳴らす。
 一体なんのつもりだと、身の危険を感じて睨みつけてやれば。

「あの男の匂いがする……」

 あいつは直近まで一緒にいた片割れの匂いを嗅ぎ取ったようで、なかなか気味が悪い発言をしてきた。

「はぁ? 何言ってんの?」

 さすがにこの内容は、聞き捨てならない。
 アルベールと会話をしていた際には距離があったし、野外だった。
 臭いなど、付着するわけがないのだ。
 ましてやこいつは、魔法の使えない脳筋騎士団長。
 魔力や魔術の気配なんて、嗅ぎ分けられるはずが……。

「あれの、どこが好きだったんだ」

 あいつは苛立ちを隠せない様子で、思い悩む私に凄む。
 そんなこと聞かれたって、困るんだけど。

 優しいところが好きだったとでも言ってやろうかと迷ったが、さすがに止めた。
 私を見上げる彼の瞳が、死んだ目をしていると気づいたからだ。
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