私達、犬猿の仲ですよね? 原作知識なしの悪役令嬢が許嫁解消したら、執着ツンデレ系の第二王子から求婚されました!
「言いたいことは、それだけか」

 無詠唱である魔術を完成させるまでの、時間稼ぎさえできればそれで充分だった。

「うるさい口は、塞ぐに越したことはない……」

 あいつは剣呑な眼差しを私に向けると、口元を歪めて顔を近づける。

 ーー私はこの瞬間を、ずっと待っていた。

 唇を奪うことだけに意識が集中して、その他が疎かになっている状況なら。
 レオドールの拘束から、抜け出せるはずだと……。

 ーー意識を集中させて。
 口を塞がれる前に、転移魔法を発動させる……!

「エルネット。俺は……」

 ーーよし、今だ! 
 彼の言いかけた言葉を、拒絶するように。
 私はあいつをこの場に残し、魔術を使って逃げ出した。

「うまくいかないな……」

 私がいなくなったあと。
 あいつが反省の色を隠せない様子で顔を覆ったのに、気づかぬまま……。
< 65 / 241 >

この作品をシェア

pagetop