私達、犬猿の仲ですよね? 原作知識なしの悪役令嬢が許嫁解消したら、執着ツンデレ系の第二王子から求婚されました!
『先に産まれた兄のアルベールを、皇太子として扱う』

 椅子取りゲームを始める前から、俺達は両親の一声で運命を決定づけられた。
 玉座に腰を下ろすのを許可されたのは、俺ではなく兄だったのだ。

『考え直してください! 僕は、レオドールと一緒に……!』
『王は二人もいらん』

 アルベールはこのままじゃかわいそうだと、何度も俺にチャンスを与えてくれと父親に懇願していたが……。
 一度決まったものは、簡単には覆られない。

 俺はこうして、あいつにもしものことがあった時のスペアとして――。
 息を殺して、兄が玉座に座るその日まで。
 影で大人しくしているように命じられていた。

 ――どうせ、今回だってそうだ。
 俺は最初から選択肢に入っていない。
 彼女と結婚するのは、皇太子である兄だ。

 お願いだからもう、俺を気にする素振りを見せないでくれ。
 なんでも二人で半分に分け合うことができないとは、わかっていたから。
 俺のことなんて無視して、堂々と玉座に腰を据えればいい。

 そうすれば、もっと。
 弟を犠牲にしてまで王になりたいのかと、兄に対する憎悪を募らせても許されたはずなのに――。
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