あざと泣き虫令嬢はサイコーな黒王子に歪んだ溺愛をされる

恋の予感

「殿下を見ると胸が高鳴るの。これは恋なのかも!」

リゼルアは嬉々としてエメリに報告する。

「よかったわね……」

だが、言葉とは裏腹にエメリは浮かない顔をしていた。

♪♪♪

リゼルアは蛙が苦手という情報を手に入れたルナアーク。エメリから仕入れた情報だ。
お茶会の時に蛙を足下に飛び込ませた。

「きゃ――――!」

リゼルアの悲鳴にルナアークは小さく拍手した。
ルナアークの記憶の中で「うおぉぉぉー!」と雄叫びをあげた女性を思い出す。

それに対し、なんと可愛らしい悲鳴だと感心している。
ルナアークのその様子は蛙から逃げ回っているリゼルアにはわからない。

蛙が退散した後、リゼルアがうるうるしている。泣くか泣かないかの瀬戸際だ。
ルナアークはその表情をそわそわしながら、ジィッと見つめる。
我慢した分、涙が堰を切ったように流れ出るリゼルア。

「こんな泣いてばかりの女なんて嫌ですよね?」
「私の前だけでは泣いて良いですよ」

ルナアークはハンカチを取り出し、リゼルアの涙を拭う。
優しい言葉をかけられたせいで、リゼルアはもっと泣いてしまう。

相変わらず感情の読めない瞳でいるが、小さくガッツポーズをするルナアーク。心の中で「もっと泣け」と言っているに違いない。
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