孤高の弁護士は、無垢な彼女を手放さない
涼しい店内。
窓から差し込む自然光が、テーブルに置かれたグラスをやわらかく照らしている。
2人は、並んで座るソファ席に腰を下ろしていた。
斜め向かいではなく、隣同士。
距離は近いのに、ほどよく落ち着く空間だった。
隼人はランチメニューを一通り見終えると、
紬に「何か気になるものありますか?」と優しく声をかけてくれた。
紬は「おすすめはありますか?」と返し、隼人が「ここのパスタ、けっこう美味しいですよ。あとは魚も新鮮で」と言えば、素直にそれを選ぶ。
メニューを店員に渡して、料理が届くまでの間、ふたりは他愛ない話をしていた。
天気の話や、好きな食べ物、学生時代のこと――そんな中で、ふと、隼人の声のトーンが落ち着いた。
「……こうして、紬さんと向き合って話していると、不思議な気持ちになります」
「え?」
「正直に言えば……自分と、こんなふうに真剣に向き合ってくれる人が現れるなんて、思ってなかったんです」
紬は黙って耳を傾けた。
「これまで……弁護士という職業柄か、肩書きで近づいてくる女性も多くて。
恋愛というより、手段みたいに見られてることが多くて。
そういう中で、ろくにその人を見ないまま、俺も軽く関わってしまったことがありました。
今思えば、ちゃんと向き合おうとしてくれた人がいたのかもしれない。
でも、自分が信じようとしてなかったから……」
隼人は、自嘲気味に笑った。
「周囲の人間も、どこか表面的なつきあいばかりで……自分も、浅い人間関係しか築けてなかったと思います」
紬は、そっと頷いた。
「一条さん……」
隼人は、紬のほうを見た。紬は、まっすぐ彼の目を見返して言った。
「人と距離を置いてたの、きっと傷つくのが怖かったからですよね。私もそうだったから、なんとなく、わかる気がします」
隼人の目が少し、見開かれた。
「私……うまく言えないけど、一条さんが、今私に話してくれたことを、大切に受け止めたいです。過去に何があっても、それを反省して、今向き合おうとしてくれてる一条さんを、ちゃんと知っていきたい」
紬のその言葉に、隼人の表情がやわらかくほどけた。
「……ありがとうございます、紬さん」
その声には、嘘も飾りもなく、まっすぐな温度が宿っていた。
店員が料理を運んできたとき、ふたりは自然と、同じタイミングで「ありがとうございます」と言った。
並ぶ皿の向こうで、微笑み合う二人の距離は、言葉よりも確かに近づいていた。
窓から差し込む自然光が、テーブルに置かれたグラスをやわらかく照らしている。
2人は、並んで座るソファ席に腰を下ろしていた。
斜め向かいではなく、隣同士。
距離は近いのに、ほどよく落ち着く空間だった。
隼人はランチメニューを一通り見終えると、
紬に「何か気になるものありますか?」と優しく声をかけてくれた。
紬は「おすすめはありますか?」と返し、隼人が「ここのパスタ、けっこう美味しいですよ。あとは魚も新鮮で」と言えば、素直にそれを選ぶ。
メニューを店員に渡して、料理が届くまでの間、ふたりは他愛ない話をしていた。
天気の話や、好きな食べ物、学生時代のこと――そんな中で、ふと、隼人の声のトーンが落ち着いた。
「……こうして、紬さんと向き合って話していると、不思議な気持ちになります」
「え?」
「正直に言えば……自分と、こんなふうに真剣に向き合ってくれる人が現れるなんて、思ってなかったんです」
紬は黙って耳を傾けた。
「これまで……弁護士という職業柄か、肩書きで近づいてくる女性も多くて。
恋愛というより、手段みたいに見られてることが多くて。
そういう中で、ろくにその人を見ないまま、俺も軽く関わってしまったことがありました。
今思えば、ちゃんと向き合おうとしてくれた人がいたのかもしれない。
でも、自分が信じようとしてなかったから……」
隼人は、自嘲気味に笑った。
「周囲の人間も、どこか表面的なつきあいばかりで……自分も、浅い人間関係しか築けてなかったと思います」
紬は、そっと頷いた。
「一条さん……」
隼人は、紬のほうを見た。紬は、まっすぐ彼の目を見返して言った。
「人と距離を置いてたの、きっと傷つくのが怖かったからですよね。私もそうだったから、なんとなく、わかる気がします」
隼人の目が少し、見開かれた。
「私……うまく言えないけど、一条さんが、今私に話してくれたことを、大切に受け止めたいです。過去に何があっても、それを反省して、今向き合おうとしてくれてる一条さんを、ちゃんと知っていきたい」
紬のその言葉に、隼人の表情がやわらかくほどけた。
「……ありがとうございます、紬さん」
その声には、嘘も飾りもなく、まっすぐな温度が宿っていた。
店員が料理を運んできたとき、ふたりは自然と、同じタイミングで「ありがとうございます」と言った。
並ぶ皿の向こうで、微笑み合う二人の距離は、言葉よりも確かに近づいていた。