孤高の弁護士は、無垢な彼女を手放さない
そうこうしているうちに、あっという間に終業時間となった。
オフィスのあちこちから「お疲れ様でした」と声が飛び交い、社員たちが次々と帰り支度を整えていく。
紬は書類をゆっくりとまとめながら、ふとスマホに目を落とす。
画面には、一条隼人からのLINEが表示されていた。
——「今日、19時にこの前の店でね」
その文字が、胸の奥をつんと刺した。
(行きたくない……)
正直、顔を見たら、声を聞いたら、泣いてしまいそうだった。
適当に「体調が悪い」って言って、今日は断ろうかな……そんなことを考えながら、ゆっくりとバッグに荷物を詰める。
気づけば、エントランスを出ていた。
ビルの前の風はすこし冷たく、心細さに拍車をかける。
俯いて歩き出そうとした、その瞬間——
「紬。」
背中から呼び止める声に、ハッとして振り返る。
そこにいたのは——
一番、会いたくなくて。
一番、会いたかった人。
一条隼人だった。
「……なんで?」
紬が驚き混じりに問うと、隼人はどこか当たり前のように言った。
「今日、近くで仕事だったんだ。直帰だからさ、迎えに来た」
その声はいつもと変わらなくて、優しくて。
それだけで、喉の奥がぎゅっとつまった。
「……行こうか」
そう言って、隼人が紬の隣に立つ。
ふたりは肩を並べ、歩き出す。
向かうのは、この前ふたりで初めて行った、紬のお気に入りの和食居酒屋。
あの日のぬくもりをもう一度、胸に探すように——ゆっくりと歩みを進めた。
オフィスのあちこちから「お疲れ様でした」と声が飛び交い、社員たちが次々と帰り支度を整えていく。
紬は書類をゆっくりとまとめながら、ふとスマホに目を落とす。
画面には、一条隼人からのLINEが表示されていた。
——「今日、19時にこの前の店でね」
その文字が、胸の奥をつんと刺した。
(行きたくない……)
正直、顔を見たら、声を聞いたら、泣いてしまいそうだった。
適当に「体調が悪い」って言って、今日は断ろうかな……そんなことを考えながら、ゆっくりとバッグに荷物を詰める。
気づけば、エントランスを出ていた。
ビルの前の風はすこし冷たく、心細さに拍車をかける。
俯いて歩き出そうとした、その瞬間——
「紬。」
背中から呼び止める声に、ハッとして振り返る。
そこにいたのは——
一番、会いたくなくて。
一番、会いたかった人。
一条隼人だった。
「……なんで?」
紬が驚き混じりに問うと、隼人はどこか当たり前のように言った。
「今日、近くで仕事だったんだ。直帰だからさ、迎えに来た」
その声はいつもと変わらなくて、優しくて。
それだけで、喉の奥がぎゅっとつまった。
「……行こうか」
そう言って、隼人が紬の隣に立つ。
ふたりは肩を並べ、歩き出す。
向かうのは、この前ふたりで初めて行った、紬のお気に入りの和食居酒屋。
あの日のぬくもりをもう一度、胸に探すように——ゆっくりと歩みを進めた。