孤高の弁護士は、無垢な彼女を手放さない
季節は、夏の名残をほんのり残したまま、確かに秋の気配を纏い始めていた。
風が少しだけ乾いていて、陽が落ちるのも早くなっている。
終業後、紬は会社から隼人の家へ向かう道すがら、少し寄り道して小さなスーパーに入った。
今日は夕飯を作るつもりだった。
いつの間にか自然に「そうしたい」と思うようになっていた。
仕事の合間に、「キッチン使ってもいい?」とメッセージを送ると、すぐに「いいよ。冷蔵庫の中のものも好きに使って」と返事が来た。
(隼人さんの好きなもの、あんまり知らないけど……なんでももりもり食べてた気がするな)
そう思いながら、旬の野菜と鶏むね肉、豆腐、卵など、栄養バランスも考えて二人分の食材をかごに入れた。
買い物袋をぶら下げながら隼人の自宅マンションに着くと、慣れた手つきで鍵を差し込み、ドアを開ける。
カチリという音とともに広がる、静かで整った空間。
やはり、きちんと整えられた部屋だった。
生活感がないわけじゃないのに、目につくところにも、見えないところにも、彼の丁寧な所作が滲んでいる。
(私なら、突然の来訪なんて絶対無理……)
苦笑しながら靴を脱ぎ、食材をキッチンへ運ぶ。
冷蔵庫の扉を開けて、買ったものを一つひとつ丁寧にしまいながら、心の奥にぽつんと温かい火が灯る。
この場所が、少しずつ「帰れる場所」になりつつあることに、紬はまだ気づきかけているだけだった。
風が少しだけ乾いていて、陽が落ちるのも早くなっている。
終業後、紬は会社から隼人の家へ向かう道すがら、少し寄り道して小さなスーパーに入った。
今日は夕飯を作るつもりだった。
いつの間にか自然に「そうしたい」と思うようになっていた。
仕事の合間に、「キッチン使ってもいい?」とメッセージを送ると、すぐに「いいよ。冷蔵庫の中のものも好きに使って」と返事が来た。
(隼人さんの好きなもの、あんまり知らないけど……なんでももりもり食べてた気がするな)
そう思いながら、旬の野菜と鶏むね肉、豆腐、卵など、栄養バランスも考えて二人分の食材をかごに入れた。
買い物袋をぶら下げながら隼人の自宅マンションに着くと、慣れた手つきで鍵を差し込み、ドアを開ける。
カチリという音とともに広がる、静かで整った空間。
やはり、きちんと整えられた部屋だった。
生活感がないわけじゃないのに、目につくところにも、見えないところにも、彼の丁寧な所作が滲んでいる。
(私なら、突然の来訪なんて絶対無理……)
苦笑しながら靴を脱ぎ、食材をキッチンへ運ぶ。
冷蔵庫の扉を開けて、買ったものを一つひとつ丁寧にしまいながら、心の奥にぽつんと温かい火が灯る。
この場所が、少しずつ「帰れる場所」になりつつあることに、紬はまだ気づきかけているだけだった。