孤高の弁護士は、無垢な彼女を手放さない
髪を乾かし終え、ソファにもたれてぼんやりとまどろんでいると、隼人が大きくあくびをした。

「紬のこと、家に送っていこうと思ってたけど……眠くなったから、やめようかな。」

くしゃっと笑いながら言うその顔は、いつもより少し子どもっぽくて、油断が滲んでいる。

「私のこと、そんなに家に返したいの?」

冗談交じりにそう問いかけると、隼人は目線をそらしながらも、まっすぐな声で言った。

「違うよ。でも俺さ……紬に手出したら、止められなくなる自信ある。その自信だけは、すごくある。……横で寝てるの、想像してみ?無理だろ。拷問だよ、ほんとに。」

笑い混じりにそう言う隼人の言葉に、胸の奥で何かがふわりとほどけた。

(私に魅力がないわけでも、遠ざけたいわけでもない。隼人くんの中の“好き”が、ちゃんと葛藤を生んでたんだ。)

それを思った瞬間、これまでの迷いや不安が、音もなく解けていくのを感じた。

「私は……隼人くんなら、大丈夫。多分。」

少しだけ声が震えたけど、それでもちゃんと目を見て言うと、隼人は目を細め、わざと意地悪そうに笑った。

「……何も知らないのに、大丈夫か?」

そのまま突然、紬の耳元に顔を寄せ、低く囁く。

「じゃあ、一緒に寝る?……本当に寝るだけだよ。」

試すような、でもどこか寂しげな声だった。
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