孤高の弁護士は、無垢な彼女を手放さない
オフィス近くの定食屋。ランチタイムのざわついた空気の中、紬・あかり・茜の三人はいつものテーブルに並んで座っていた。

「セクハラ野郎を断罪する時が来たな」
あかりが味噌汁をひと口飲んで、拳を握る。

「うん。次の面談でちゃんと記録残すって言ってたし、少し安心したかな」
紬が頷くと、茜が箸を止めて何気ない口調で言った。

「ところでさ、一条さんとどうなの?ちゃんと仲良くしてる?」

「ああ……うん、仕事終わりに家行って、一緒にご飯食べたりしてるよ」

あかりが小声で身を乗り出してくる。
「じゃあさ、進んだ?」

その意図を即座に察した紬は、少し苦笑いしながら答えた。
「ううん、ほぼ停滞。私の方が困ってるくらいだよ」

「えぇー」
二人の声が重なる。

あかりは箸を置いて、腕を組んだ。
「一条さんの理性どうかしてる。さすが法の番人て感じね」

「紬はさ、その先も欲しいと思ってるわけ?」
問いかけるあかりの目は真剣だ。

「うん、まあ……ちょっと怖いけど、欲しいと思ってる。多分」
紬は自信なさげに、テーブルの端を指でなぞりながらつぶやいた。

< 164 / 211 >

この作品をシェア

pagetop