孤高の弁護士は、無垢な彼女を手放さない
「一条さんはさ、これまでいろんな女の人を相手してるわけでしょ?」

「ぎゃー聞こえてる!耳塞ぐー」
紬は両手で耳を覆うそぶりをしながら、わざと大きな声でかぶせる。

あかりは続ける。
「だからいくらでも誘おうと思えば誘える。でも何もしないってことは?」

そのまま茜に視線を向ける。

茜は少し考えたあと、淡々と答えた。
「……一条さんの心の中は、理性と紬を自分のものにしたい欲の狭間で、崩壊寸前?」

「それだ」
あかりがバシッとテーブルを叩いた。

紬は顔を真っ赤にして、両手で頬を覆った。
「そんなストレートに解説しないでよ……」

「そういえば昨日、隼人くんの家にお泊まりしたんだけどさ、その時に“手を出したら止められなくなるから”って言ってた」

二人は一瞬ぽかんとし、その直後。

「あんた、お泊まりしたのに抱かせなかったの!?」
あかりが赤裸々に問い詰める。

「だ、抱かせなかったって……そんな言い方しなくても……私だって、そういうことになっても、受け入れようとは思ってたし」
紬が必死に弁解する。

それを聞いたあかりと茜は、同時に頭を抱えて机に肘をついた。

「こりゃあ、紬は悪い女だよ。一条さんに同情するわ……」
あかりが苦笑混じりに言う。

茜が顔を上げ、きっぱり言った。
「……昼からする話じゃない」

3人の間に一瞬沈黙が落ちたあと、全員が笑い声をこぼした。
いつもどおりの昼休み。
でも紬の中で、昨日より少しだけ、自分の気持ちの形が見えてきた気がした。
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