孤高の弁護士は、無垢な彼女を手放さない
仕事を終えて、真っ直ぐには向かわなかった。
一度、自分のアパートに立ち寄る——
理由ははっきりしていた。
今日は「夕飯を作りに行く」と言ったけれど、それだけではない。
紬はクローゼットを開け、目当てのバッグを手に取った。
機内持ち込みサイズの、一泊用カバン。
そこに、着替えと最小限の化粧品、歯ブラシ、くし、ヘアゴム、スキンケア用品、部屋着……必要なものを静かに詰めていく。
服は、あくまで「ラフすぎない」程度のカジュアル。
彼の部屋で過ごす時間に、だらしなく見えるのも違う。
自分のためでもあり、彼のためでもある、少し気合いの入った荷造りだった。
身支度を終えたら、スーツから落ち着いた色味のワンピースに着替え、鏡で確認。
意図的すぎず、でも女の子として“頑張ったことが伝わる”ようなバランス。
バッグを肩にかけ、スーパーに立ち寄り、夕食の材料を選ぶ。
鮭、野菜、卵、少し贅沢に買ったフルーツ。
気づけば両手いっぱい。
(どう見ても、夕飯だけじゃない荷物量だよね……)
心の中で小さく苦笑しながら、電車に乗って一駅。
少しだけ緊張した手で一応インターホンを押し、隼人の家のドアを開けると、ほっと息を吐いた。
「おじゃまします……」
言いながらバッグを下ろし、買ってきた食材を手際よく冷蔵庫にしまう。
けれど、次の瞬間、自分でも驚くような動きをした。
ふと、熱を逃がすように、リビングにぱたんと仰向けに寝転んでいた。
冷たい床の感触が、火照った背中に心地よい。
(なんか……すごく、動揺してるな、私)
照れでも緊張でもない。
ただただ、今日は“自分の気持ちをごまかさない”と決めてきた。
その覚悟が、荷物より重く、胸の中に広がっていた。
一度、自分のアパートに立ち寄る——
理由ははっきりしていた。
今日は「夕飯を作りに行く」と言ったけれど、それだけではない。
紬はクローゼットを開け、目当てのバッグを手に取った。
機内持ち込みサイズの、一泊用カバン。
そこに、着替えと最小限の化粧品、歯ブラシ、くし、ヘアゴム、スキンケア用品、部屋着……必要なものを静かに詰めていく。
服は、あくまで「ラフすぎない」程度のカジュアル。
彼の部屋で過ごす時間に、だらしなく見えるのも違う。
自分のためでもあり、彼のためでもある、少し気合いの入った荷造りだった。
身支度を終えたら、スーツから落ち着いた色味のワンピースに着替え、鏡で確認。
意図的すぎず、でも女の子として“頑張ったことが伝わる”ようなバランス。
バッグを肩にかけ、スーパーに立ち寄り、夕食の材料を選ぶ。
鮭、野菜、卵、少し贅沢に買ったフルーツ。
気づけば両手いっぱい。
(どう見ても、夕飯だけじゃない荷物量だよね……)
心の中で小さく苦笑しながら、電車に乗って一駅。
少しだけ緊張した手で一応インターホンを押し、隼人の家のドアを開けると、ほっと息を吐いた。
「おじゃまします……」
言いながらバッグを下ろし、買ってきた食材を手際よく冷蔵庫にしまう。
けれど、次の瞬間、自分でも驚くような動きをした。
ふと、熱を逃がすように、リビングにぱたんと仰向けに寝転んでいた。
冷たい床の感触が、火照った背中に心地よい。
(なんか……すごく、動揺してるな、私)
照れでも緊張でもない。
ただただ、今日は“自分の気持ちをごまかさない”と決めてきた。
その覚悟が、荷物より重く、胸の中に広がっていた。