孤高の弁護士は、無垢な彼女を手放さない
朝食を終え、紬は手際よく食器を食洗器に入れて回した。
機械の低い駆動音が部屋に響く中、ふたりの空間は少しだけ静かさを増した。
ひと息ついたところで、紬はキッチンに戻り、コーヒーメーカーでドリップしたコーヒーを二つのマグに注いだ。
立ちのぼる香ばしい香りが、まだ朝の余韻をまとった部屋を優しく包む。
ソファにくつろいでいる隼人の前に、コーヒーをそっと置いて、紬もその隣に腰を下ろした。
「ありがとう」
隼人はそうつぶやいたが、その手には小さな銀色の薬のシートが握られていた。
視線を落としたのを感じたのだろうか、隼人はぽつりとつぶやいた。
「調子が悪いときに、頓服として飲んでる。……抗不安薬」
言葉は平坦で、感情を押し殺していたが、そこには確かに“生き抜くための選択”を重ねてきた者の静かな気配があった。
紬はそっと隼人の頭に手を伸ばし、サラリと優しく撫でる。
そして、薬を持つ彼の手を自分の両手で包み込んだ。
「……ずっと、一人で、耐えてきたのね」
その言葉には、責める気持ちも、詮索もなかった。
ただ、そばにいたいという、深く静かな想いだけがあった。
隼人は何も言わなかった。ただそのまま、紬の手のぬくもりに身を委ねていた。
ほんのわずか、彼の肩の力がほどけていく気がした。
機械の低い駆動音が部屋に響く中、ふたりの空間は少しだけ静かさを増した。
ひと息ついたところで、紬はキッチンに戻り、コーヒーメーカーでドリップしたコーヒーを二つのマグに注いだ。
立ちのぼる香ばしい香りが、まだ朝の余韻をまとった部屋を優しく包む。
ソファにくつろいでいる隼人の前に、コーヒーをそっと置いて、紬もその隣に腰を下ろした。
「ありがとう」
隼人はそうつぶやいたが、その手には小さな銀色の薬のシートが握られていた。
視線を落としたのを感じたのだろうか、隼人はぽつりとつぶやいた。
「調子が悪いときに、頓服として飲んでる。……抗不安薬」
言葉は平坦で、感情を押し殺していたが、そこには確かに“生き抜くための選択”を重ねてきた者の静かな気配があった。
紬はそっと隼人の頭に手を伸ばし、サラリと優しく撫でる。
そして、薬を持つ彼の手を自分の両手で包み込んだ。
「……ずっと、一人で、耐えてきたのね」
その言葉には、責める気持ちも、詮索もなかった。
ただ、そばにいたいという、深く静かな想いだけがあった。
隼人は何も言わなかった。ただそのまま、紬の手のぬくもりに身を委ねていた。
ほんのわずか、彼の肩の力がほどけていく気がした。