孤高の弁護士は、無垢な彼女を手放さない
「いただきます」

テーブルに並んだのは、少し不格好だけど温かみのある家庭の味。
鶏の照り焼き、野菜たっぷりの味噌汁、炊きたての白米。
隼人が手伝った痕跡がそこかしこに残っている。

「んー、おいしい……!」
紬は一口食べて、ふわりと笑った。

「ほんと? なんか俺が切った鶏、ちょっとボコボコしてるけど……」
隼人は箸を持ちつつ、照れたように紬の表情を伺う。

「うん。形なんて関係ないよ。ちゃんと愛情入ってるから」
「愛情ね……」

隼人は一瞬、噛みしめるように紬の言葉を繰り返し、口元に優しい笑みを浮かべる。

「でも、こうやって並んでごはん食べるの、なんかいいね」
「うん。すごく自然で、落ち着く。ふたりで作ったから、余計にそう思うのかも」

テレビはつけずに、キッチンから漂う香りと、湯気の立つ食卓。
湯呑みに注がれたお茶の湯気が、やわらかく揺れる。
時間がゆっくりと流れているように感じられるのは、きっと隣にいる人が理由だ。

「……また一緒に作ってくれる?」
紬の問いに、隼人はうなずいた。

「もちろん。今度はもうちょっと成長してると思う」
「うん、楽しみにしてる。でも、今日も100点だよ」
「……採点甘くない?」
「ううん、本気」

ふたりの間に流れる、ささやかで確かなぬくもり。
その静かな夜の食卓に、言葉よりも深く、愛が息づいていた。
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