孤高の弁護士は、無垢な彼女を手放さない
月島総合法律事務所の来客スペースの一角。
壁際に設置されたコーヒーマシンの前、紬はひとつだけ置かれたベンチに腰を下ろした。
静まり返った午後のオフィス。
誰もいないのをいいことに、両手で包むようにして紙コップを持ち上げると、熱くも冷たくもないコーヒーをそっと口に含み、喉の奥まで染み込ませるように飲み込んだ。
焦げたような苦味が、現実に引き戻してくれる気がした。
一条の言葉が、頭の中で繰り返し再生される。
“こんなことで潰れられたら、俺が困る”
“コーヒーでも飲んでおいで”
そんな言い方しなくてもいいのに、と思う。
でも、たぶん、あれが――あの人なりの、優しさだった。
ごくん、とまた一口。
涙が、にじみそうになった。
あの人は、優しさを見せないだけ。
表に出すのが不器用で、どこかにそれを隠してる。
きっと、自分でも気づかないほど深くに。
紬は、紙コップを両手で握りしめながら、上を向いてそっと瞬きをした。
涙が零れ落ちる、その寸前でなんとかこらえる。
――もう少しだけ、頑張らなきゃ。
そう思いながら、彼女は静かに立ち上がった。
壁際に設置されたコーヒーマシンの前、紬はひとつだけ置かれたベンチに腰を下ろした。
静まり返った午後のオフィス。
誰もいないのをいいことに、両手で包むようにして紙コップを持ち上げると、熱くも冷たくもないコーヒーをそっと口に含み、喉の奥まで染み込ませるように飲み込んだ。
焦げたような苦味が、現実に引き戻してくれる気がした。
一条の言葉が、頭の中で繰り返し再生される。
“こんなことで潰れられたら、俺が困る”
“コーヒーでも飲んでおいで”
そんな言い方しなくてもいいのに、と思う。
でも、たぶん、あれが――あの人なりの、優しさだった。
ごくん、とまた一口。
涙が、にじみそうになった。
あの人は、優しさを見せないだけ。
表に出すのが不器用で、どこかにそれを隠してる。
きっと、自分でも気づかないほど深くに。
紬は、紙コップを両手で握りしめながら、上を向いてそっと瞬きをした。
涙が零れ落ちる、その寸前でなんとかこらえる。
――もう少しだけ、頑張らなきゃ。
そう思いながら、彼女は静かに立ち上がった。