孤高の弁護士は、無垢な彼女を手放さない
午後3時すぎ。
紬は、自席のパソコンを前に書類整理を進めながらも、さっきの出来事がどうにも頭から離れなかった。
(……ほんとに、あれで普通なんだろうか?)
月島総合法律事務所での、たった数分のやり取り。
一条隼人という男は、まるで感情というものを置き忘れてきたような人だった。
「あの、こちらが先日お送りした――」
言葉を遮るように差し出した手。
目も合わせず、まるで紙の束としか見ていないような扱い方。
そしてすぐに背を向けて、自分は無関係とばかりに画面へ戻る態度。
(冷たい……っていうか、あれはもう“拒絶”って感じだった)
ふと指先が止まる。
嫌な感覚が、じわりと背中に広がっていた。
紬にとって、男性との距離感には人一倍敏感なところがある。
――それは、あの入社当初のセクハラまがいの出来事が、ずっと尾を引いているから。
けれど、今日の一条の態度は、それとはまた別の種類の“怖さ”を持っていた。
(優しくされるのが怖いのは慣れてる。でも……何も言わずに、存在すら否定されるような無関心って、もっと……冷える)
まるで、自分が“人間”としても見なされていないような、そんな不安。
紬は、ほんのわずかに腕を抱きしめた。
(書類のことでまた行かなきゃいけないかもしれないけど……正直、ちょっと怖いな)
感情が読めない、氷のような視線。
話しているのに、まるで“壁”とやりとりしているような違和感。
あんなタイプの人は、これまで出会ったことがなかった。
(どうしてあんなに、女の人に興味なさそうなんだろう)
無意識のうちに、指先でマグカップの縁をなぞる。
興味本位ではなく、本能的な“防衛反応”に近い。
心がざわつくのは、たぶん怖さだけじゃない。
――でも、それが何なのかは、まだ自分でもわからなかった。
紬は、自席のパソコンを前に書類整理を進めながらも、さっきの出来事がどうにも頭から離れなかった。
(……ほんとに、あれで普通なんだろうか?)
月島総合法律事務所での、たった数分のやり取り。
一条隼人という男は、まるで感情というものを置き忘れてきたような人だった。
「あの、こちらが先日お送りした――」
言葉を遮るように差し出した手。
目も合わせず、まるで紙の束としか見ていないような扱い方。
そしてすぐに背を向けて、自分は無関係とばかりに画面へ戻る態度。
(冷たい……っていうか、あれはもう“拒絶”って感じだった)
ふと指先が止まる。
嫌な感覚が、じわりと背中に広がっていた。
紬にとって、男性との距離感には人一倍敏感なところがある。
――それは、あの入社当初のセクハラまがいの出来事が、ずっと尾を引いているから。
けれど、今日の一条の態度は、それとはまた別の種類の“怖さ”を持っていた。
(優しくされるのが怖いのは慣れてる。でも……何も言わずに、存在すら否定されるような無関心って、もっと……冷える)
まるで、自分が“人間”としても見なされていないような、そんな不安。
紬は、ほんのわずかに腕を抱きしめた。
(書類のことでまた行かなきゃいけないかもしれないけど……正直、ちょっと怖いな)
感情が読めない、氷のような視線。
話しているのに、まるで“壁”とやりとりしているような違和感。
あんなタイプの人は、これまで出会ったことがなかった。
(どうしてあんなに、女の人に興味なさそうなんだろう)
無意識のうちに、指先でマグカップの縁をなぞる。
興味本位ではなく、本能的な“防衛反応”に近い。
心がざわつくのは、たぶん怖さだけじゃない。
――でも、それが何なのかは、まだ自分でもわからなかった。