孤高の弁護士は、無垢な彼女を手放さない
翌朝。オフィスの自動ドアが開くと同時に、茜とあかりがまるで待ち構えていたように近づいてきた。

「紬!」

名前を呼ばれた瞬間、まだタイムカードを押す前だった紬は少し驚いて立ち止まる。

二人の顔は、どこか決意を宿していて、いつもの明るい表情とは少し違っていた。

「今日こそちゃんと言おうと思うの。岩崎が、セクハラ変態クソ野郎だってこと。」
茜がきっぱりと言い切る。あかりはすぐに、「ほんとそれ!」と力強く頷いた。

紬は少しだけ笑って、「岩崎にずいぶんついてるね、いろいろ」と冗談めかして返した。
けれどその目には、昨日までとは違う芯のようなものがあった。

「……片山さんに、話してみようかな」

言葉にした瞬間、自分の胸の内を誰かに預ける怖さと、同時に一歩踏み出す覚悟が入り混じったような気がした。

すると、茜もあかりも同時に声を上げた。

「私たちも一緒に行くから!」

ぴったりと隣に立つ二人の存在に、紬の胸がじんと熱くなる。

――もう、一人で抱えなくていい。

そう思えただけで、心がほんの少し軽くなった気がした。
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