孤高の弁護士は、無垢な彼女を手放さない
昼休み、紬と茜、あかりの三人は、オフィス近くの小さな定食屋に入っていた。

落ち着いた照明と木のテーブルが並ぶその店は、ほっと一息つくにはぴったりの場所だった。

注文したランチが運ばれてきても、三人の話題は先ほどの片山部長との話に続いていた。

「紬、岩崎にそんなことされてたなんて…今まで詳細までは聞いてなかったけど、マジであいつクズじゃん」
あかりが箸を握りながら吐き捨てるように言う。

「ほんとに。私たちの大事な紬に汚い手で触るんじゃねえよ!」
茜も怒りが収まらない様子で、茶碗を置いたままこぶしを握っていた。

紬はそんなふたりを見て、ふっと優しく笑った。

「ありがと。でも、二人が後ろにいるって思ったらすごく安心できたし、片山さんともちゃんと話ができた。しっかり対応してくれそうで…こんなことならもっと早く言えばよかったよ。本当にありがとう」

その言葉に、あかりが少し照れたように笑いながら言う。
「当たり前でしょ?友達が嫌な思いしてるのなんて、ほっとけるわけないじゃん」

茜も大きく頷く。
「うん。何でも相談して。力を合わせれば、大体のことは何とかなるんだからさ。……一条にも変なことされたら言ってね!」

すると、あかりが急に「あっ」と声を上げた。

「そういえば、一条のことなんだけどさ――」

その一言に、紬が一瞬固まる。

「なんか紬、一条さんに恋しちゃったみたいで」

ぽろっと口にしたあかりの爆弾発言に、茜は思わず口にした味噌汁を吹きかけそうになり、慌てて手で口を押さえた。

「ぶっ、ちょ……ま……!」
咽せながらも必死に笑いをこらえる茜。

紬は顔を真っ赤にし、「ちょっと!なんで言うのよ!」と頬を膨らませる。

あかりはいたずらっぽく笑いながら、
「だって隠し通せるもんでもないよ?」と肩をすくめた。

笑い声が定食屋の片隅で弾ける。重苦しい午前の空気が、少しずつ、柔らかく、温かくほどけていった。
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