策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす

兄の准一が、急いでグルメサイトやSNSのサポートセンターに誹謗中傷の削除を要請する。一件ずつ問い合わせフォームからメールを送るしかできないようで、千鶴も分担して該当レビューの削除を依頼した。

閲覧数やいいねの数が伸びていない今のうちに手を打たなくてはならない。もちろんすべて事実無根だが、もしもなにかのきっかけで拡散されてしまえば、恐ろしい事態になりかねない。

なぜ急にこんな投稿が増えたのか。千鶴は悪意のこもったレビューを呆然と見つめる。

(はじめに悪意のあるレビューにお兄ちゃんが気づいたのは今月の頭だっけ。頻繁に書かれ出したのは、ここ一週間か……)

いったい誰がなんの目的でこんなことをするのだろう。

千鶴が考え込んでいると、准一が「ちょうど嶋田父娘が来た頃だな」と呟いた。

「娘の方がやたらお前につっかかってたし、親父に追い出されたのを根に持ってるのかもしれないな」
「そんな……」

たしかに娘の恵梨香はかなり立腹していたし、最終的には食事を終えないまま追い出される形で店を去っている。だからといって、こんな悪質な嫌がらせをするだろうか。

(確証もないのに疑うわけにはいかないけど、もしもそうだとしたら私がうまく対処できなかったせいだ……)

落ち込んでいても夜の営業時間は待ってはくれないため、レビューの削除を待ちながら様子を見ることにして、お客様をお迎えする準備を整えていく。

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