策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす
ダニエルがひだかや伊織に対して憤っていること、今からとあるサイトの誹謗中傷レビューをすべて消してみせること、自分なら個人のSNSの投稿まですべて一括で削除するルートを持っているということが、千鶴にもわかるような簡単な英語で書かれている。
さらには日本とフランスの共同研究プロジェクトは、リュカが唯一心を開いている自分の胸ひとつでどうとでもできるともある。
最後には警告するように【誰かに告げれば、この話はなかったことにする】という旨と、彼のプライベート用の連絡先、そしてホテルの部屋番号が記されていた。
千鶴は添付されたグルメサイトのURLをクリックする。そのサイトは一番多く誹謗中傷のレビューが投稿されていたが、削除依頼をしても全く動いてくれなくて困っていたところだ。
「あ、全部消えてる」
千鶴は目を見張った。十件近くあった悪意のこもったレビューが、すべて削除されている。星の数の平均値はまだ低いままだが、数時間後には反映されるだろう。これで口コミを見たお客様に不安を抱かせてしまうことはないはずだ。
「よかった……」
安堵の気持ちがある反面、まだまだ他のサイトやSNS上にも同じようなレビューが残っているという現実を突きつけられる。
それらがこの先どんどん拡散されてしまえば、ダニエルの耳に入ってしまったように、いずれもっと取り返しのつかない事態に発展するのでは。そう考えると、不安で仕方がない。