策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす

エリックがどういう手段でレビューを一括で消したのかは不明だが、もしも個人のSNSの投稿まで削除できるというのならぜひ依頼したい。

(でも、ホテルって……)

初めてひだかに来店した日の彼の行動やこちらを見る目つきから、さすがに鈍感な千鶴でも、のこのこホテルに行ったらどうなるかくらいわかる。

伊織もエリックに目をつけられたら厄介だと当初から言っていたし、だからこそあのレセプションで大々的に婚約者がいると振る舞うことで、エリックの千鶴に対する興味を失わせようと考えたのだ。

しかし、どうやらその作戦は失敗に終わってしまったらしい。エリックが見返りとして千鶴になにを求めているのか、考えただけでも気持ちが悪い。

「……どうしよう」

エリックの言いなりにはなりたくない。千鶴に触れていいのは伊織だけだし、触れられたいと思うのも彼だけだ。心を通わせて本当の夫婦になった今、より強くそう感じる。

それに、伊織は言っていた。

『頼むから、俺のいないところで傷つかないで』

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