旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 日曜にお休みを代わってもらった翌日に早退、さらにその翌日は病休。
 大いに迷惑をかけてしまった私の〝最後の晩餐〟の話題は、彼女の口から職場内に広められていても少しもおかしくなかったのに、そんなことはなかった。スタッフが女性中心の、それも大して広くもない職場で、本来なら噂なんてすぐに回るはずなのに。

 私は理事長が直々に引っ張ってきたコネ入職の人間で、噂とか陰口とか、今でもそうした話題の的になりやすい。
 勤め始めて四年も経っているし、その間に辞めたり新しく入ってきたりしたスタッフもいるけれど、中にはまだ腫れ物のような接し方をする人もいる。

 同じ場所で働いているだけの、友人でもなんでもない人から陰口を叩かれるくらい、別に構わない。ただ、この職場で私が一番長く接しなければならないこの人がそういうことをしない人なのは、純粋にありがたいなと思う。

「はは。修羅場なんてそんな……いや修羅場か……」

 笑い飛ばすつもりで口を開いたはずが、途中で笑みが固まってしまう。
 言い得て妙では、とつい思ってしまったせいだ。

「は? マジで修羅場なの?」
「いや、そういうわけでは……」
「急に深刻そうな顔しないでよ、怖いんですけど!」
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