旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「いえ。問題ありません」

 抑揚のない返事を聞きながら、隣の彼に目を向ける。能見さんは私には視線を向けてこないから、私だけがじっと彼を見上げる形になる。
 高い位置にある彼の顔に焦点を定め、私だって小柄というほどではないのに、やっぱりすごく背の高い人だなと改めて思う。さっきまで光が宿っていないようにしか見えなかった彼の瞳を、差し込んだ陽光が鮮やかに照らしている。

 端正な顔立ちに思わず見入ってしまった、そのときだった。

「意外ですか?」
「……っ、え?」

 前触れもなにもなく問いかけられ、つい素っ頓狂な声が零れた。
 どういう意味か尋ね返したくても、見下ろすように視線を向けられた私は、温度を感じない彼の目に囚われて咄嗟には声が出せない。

「『この人なんで今の齢まで独身だったんだろう』と顔に書いてありますので」

 固まっているうちに淡々と告げられ、頬が引きつってしまう。
 ……確かにそれは思った。けれど、そこまで顔に出ていただろうか。少なくとも私自身は、本人を前にそんな失礼な態度を見せたつもりはなかった。

 どう返事をするのが正解なのか分からない。
 言葉に詰まっていると、それすらも悟られているのか、能見さんは淡々と話を続ける。
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