旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 強張ったあなたの指の感触を、梳かれていた髪から感じ取る。
 明らかにぎょっとしている様子が伝わってきて、私は慌てて取り繕う。

「すみません、急に重い話になっちゃった。もちろん和永さんのことじゃないですよ?」
「あ、ああ」
「あの、叔父からって本当になにも聞いてないんですか?」

 尋ね方は自然と、顔色を窺うような調子になる。

「……『結婚に積極的な子じゃない』とは。けど、それ以外は特に」

 困惑げな返事を聞きながら、ふとお見合いのときに交わした言葉を思い返す。

『目に入れても痛くないほど大事な姪、と伺っています』

 あんな返事があったからには、ある程度事情が伝わっているのかもと思っていた。けれど、今の反応を見る限りではそうでもなさそうだ。

「だからあの日も、変に馴れ馴れしくしないほうがいいかと思った。君が断りたいなら断りやすいように」

 そうだったんですね、と返しながら、くらりと眩暈がした。
 あの日のあなたの態度は、つまりは純粋な気遣いだったことになる。では、あの『愛は期待するな』という話ももしかして、とどうしても考えてしまう。でも結婚から一年ほとんど放置されていたのは事実で、だからきっとあの言葉はあなたの本心だったはずだ。

 だってそうでなければ、私は一体、なんのために。
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