旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 ぐるぐると目が回りかけ、私は無理やり考えを振り切った。
 それ以上考えていたら、話なんてとても続けていられなくなりそうだったから。

「ええと、あの頃は私、仕事も辞めて新居の準備とか始めてたんですけど」

 自分から始めた話だ。さすがにこんな中途半端なところで切るわけにもいかなくて、私はなんとか話を継続する。

「式まであと一週間くらいって頃、相手が浮気してたうちのひとりが、実家に直談判に現れまして」
「は?」

 心底意味が分からないと言わんばかりの相槌だった。
 初めて聞く声だな、と思いつつも気持ちは分かってしまう。私自身も、今となっては本当に『は?』しかない。

 あの日は両親が血相を変えて私からその女の人を引き剥がし、その後の対応をしてくれた。
 当の本人はかなり面食らったようだ。多分、私に文句を言いたかったとか嫌がらせしたかったとか、あるいはマウントを取りたかったとか、多分そういう気持ちで訪れたのではないかと思う。

 元婚約者――()()(かわ)さんが浮気していた相手は複数人いて、そのときになってようやく、ああ、私って本当に比留川さんから大切には思われてなかったんだな、と思い知った。
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