旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
(私、この人のこと、もうずっと好きなままだ)

 分かっていた。そんなことは、もうずっと前から。
 離れたいわけがない。本当は受け入れてほしい。あなたが好きだと伝えるのも、私のことも好きになってほしい、愛してほしいと願うのも。

 それは期待という名の私の欲だ。
 あなたに対して、私が最も抱いてはいけないもの。

 ん、と声を漏らすと、あなたの唇はようやく離れた。
 薄く開いた瞼の先に見えたあなたは、いかにも名残惜しそうな顔をしている。少し身を乗り出せばまた簡単に触れてしまえそうな距離で、なにかを言おうとしたあなたの唇が開きかけたそのとき、瞼が見る間に熱を持ち始めた。

「っ、薫子?」

 涙が浮かぶよりも早く、嫌だったか、とあなたはひどく焦った様子で訊いてくる。
 黙って首を横に振ってから、私はくしゃくしゃに歪んだ自分の顔を両手でそっと隠した。

「……私」

 顔を隠した途端、目頭と目尻の両方から一気に涙が溢れ出す。

「もう分かんないです、……いろいろ覚悟決めて離婚届、渡したのに、全然うまくいかなくて」
「っ、待ってくれ薫子、俺は、」
「私、和永さんのなににもなれないのに、まだ隣にいて、良くないって分かってるんですちゃんと、……けどもうやだぁ……」
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