旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 帰りは副院長の車で送ってもらうことになり、その道中。
 後部座席に板戸さんと並んで座り、シートベルトをしながら若干の緊張を覚える。幼い頃から、人が運転する車に乗るときに多少緊張してしまう癖があるのだ。
 けれど考えてみれば最後の晩餐の日、埠頭に向かう間も、和永さんの運転する車の助手席ではそうした緊張は覚えなかった。不思議だ。乗り心地が良かったからだろうか……けれどその考え方だと、今、副院長に対して絶妙に失礼になってしまう。

「ええと、ここからだと板戸さんちのほうが近いよね。先に向かうね」
「ありがとうございます。あたしは近くのコンビニまでで大丈夫なんで」
「私も通りの入り口辺りで構いません、本当に助かります。……実は最近、帰り道で妙な感じがあって、ちょっと不気味で」

 思わず零れた懸念に、運転席の副院長が「え」とミラー越しに微かに眉をひそめてみせる。

「妙ってどんな?」
「いえ、大したことでは。バスを待ってる間に視線を感じたりとか、……非通知の着信が増えてたりもしてて、なんとなく気味が悪くて」
「なにその話? あたしも何気に初耳なんですけど」
「ええと、気のせいかもですし、わざわざ皆さんに心配をかけるほどではないかなと」
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