旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
     *


 夜は客室に泊めさせてもらった。
 たった一年強しか離れていないのに、まるで別の家に招かれている気分だった。私の家はすでに、和永さんと暮らしているあのマンションの一室なんだな、と改めて実感してしまう。

 翌朝は、実家から職場に向かった。
 元々通っていたのと同じ路線の電車を、定期なしで利用する。その感覚も妙に新鮮だった。通勤路が違うから、当然、あの花屋さんの前も通らなかった。

「おはようございます」
「おはようございま~す」

 いつもより早めに着いてしまった。
 制服に着替えて診療室へ向かい、ドクターや衛生士たちと挨拶を交わす。

 副院長の姿もすでにあった。
 一昨日、私が車を降りた後の和永さんとの一連までは、幸い彼には見えていなかったらしい。「一昨日はどうも」と笑いかけられ、あとは本当に普段通りだった。
 ほっとした。副院長は〝つけられているかも〟という私の話を聞いて厚意で送ってくれたのに、車を降りてすぐあの事態だったから、バックミラーなどで見られていたなら誤解されてもおかしくなかった。
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