旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「ちょっと、どこ行くんですか」
「ええ……さっき言いましたよね、今日電車なんですよ私」
「言いましたっけそんなこと」
「言いましたよぉ……」
「ごめんごめん、悪いけどちょっとだけ付き合って」

 およそ二週間前、日曜に休みを代わってもらってから、板戸さんの私への話し方は結構やわらかくなった。私自身、年上とはいえ後輩だから、崩した喋り方をしてもらったほうが正直気楽ではある。

 彼女に連行された先は、地下鉄の入り口から五十メートルもない場所に建つビル内の、チェーンのファミレスだった。
 ひとり暮らしの頃たまに通っていた馴染みのあるファミレスだけれど、この店舗には初めて入る。冷房の効いた店内へ、少し緊張しつつ足を踏み入れると、板戸さんはスマホをいじりながら「先に来てるぽい」と呟いた。

 誰かと待ち合わせですか、と訊く暇もなく「待ち合わせです~」とスタッフさんに名前を伝えた板戸さんは、私の目には過去一番マイペースを貫いているように見えた。
< 170 / 244 >

この作品をシェア

pagetop