旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 たどたどしく事情を説明する途中、二度グラスを手に取ってアイスティーを喉に流し込んだけれど、渇きは碌に癒えなかった。
 苦い吐息を落とした私を、しばらく沈黙とともに眺めていた榛奈さんは、やがて小首を傾げながら尋ねてきた。

「その〝干渉しない〟って約束、薫子さんから切り出したの?」
「い、いいえ。『愛情は期待しないでほしい』と向こうから」
「ワオ……」

 両手で口元を覆いつつ、榛奈さんは覇気のない相槌を挟んだ。同情が感じられる声だった。
 ちょうどそのタイミングで頼んだパスタが運ばれてきて、先に食べちゃおうか、と榛奈さんに促されるままフォークを手に取る。
 かちゃかちゃとカトラリーを鳴らしながら気まずく食事を進めていると、困ったように何度か眉間を撫でた榛奈さんが、やはり何度かうーんと唸り声をあげた後、再び問いかけてきた。

「それ、今も続けてるってこと?」
「え?」
「愛のない結婚を強いられて、そんな不毛な生活にわざわざ付き合ってあげてるんだよね、薫子さんにしてみれば」

(……え?)

 思いもよらないことを訊かれ、食事の手がふと止まる。目も自然と泳いでしまう。
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