旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 再び足を動かし始める。
 告げながら、私は結婚記念日にかけた電話を思い出していた。

 あれからたった三週間で、私たちはこんなに近づけたのか――そんな考えが巡るや否や、息もつけないほど胸がいっぱいになってしまう。

(会いたい)

 気ばかりが逸る。
 あなたの声を直接聞きたい。話をしたい。謝りたい。無理やり『愛してる』なんて言わせてしまったことを謝って、私の気持ちを改めて伝えて……そしてなにより、この一年であなたに恋をしてしまった私が、本当は愛情の通った夫婦生活を送りたいと願っていることも、きちんと伝えるべきだ。

「早く会いたいです、……私、あなたに話したいこと、」

 感極まって震えかけた声は、不意にそこで途絶えた。
 実家は目前だ。三軒隣のご近所さん宅の石塀の前に、外灯に照らし出された人影が見え、私はぎょっと目を瞠る。

『……薫子?』

 どうした、と電話越しに聞こえるあなたの声が、急速に遠のいていく。
 なぜなら、まるで私の帰りを待ち伏せしていたかのようにそこに立っていたのは。

「こんばんは、薫子ちゃん。誰と話してるの?」
< 190 / 244 >

この作品をシェア

pagetop