旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 今度こそ、ぞっと背筋が粟立った。

「久しぶりだね~三年ぶり? あれ、四年だっけ?」

 四年前だよ、と口に乗せなかった返事を、私は口内で噛み殺す。
 軽々しい男の声色は、四年前からあまり変わっていない。その一方で、直視を避けられなかった相貌はだいぶ変化していた。特に伸びた髪や無造作に生えた髭のせいか、かつてより薄汚れた印象を私に抱かせる。

 ()()(かわ)だった。
 四年前に私が婚約破棄した、浮気魔の屑男。

(嘘……なんでこの人が、)

 外灯の控えめな明かりに浮かび上がる顔からも姿からも、あるいは立ち居振る舞いからも、かつての快活な印象は鳴りを潜めている。
 言い方は悪いけれど、どことなく亡霊を彷彿とさせた。四年前、最後に見た頃よりだいぶ痩せこけて見えるからだろうか。

「電話、結構ずっとかけてたんだけど、全然出てもらえないから直接来ちゃった」

 笑いかけられ、息が詰まった。
 続いていた非通知の着信の正体は、まさか――ここ一週間あまりで激増していた、それも間違い電話とは思えない数十秒単位の着信を思い返し、ぞわりと血の気が引く。
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