旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「キミのご両親には合わせる顔がなくて……相談したいことがあるんだけど、まずはキミが取っかかりになってくれないかなって」

 終始へらへらと舐めた口調で喋り続けられ、苛立ちのあまり額に血管が浮き出そうになる。
 どの面を下げて、とさっきよりも攻撃的な感情に支配され、喉が焼けるように熱くなる。

「私には合わせる顔があるとでも?」

 苛立ちでどくどくと頭の奥が痛むほどなのに、声は思いのほかすんなり零れる。我ながら、怒りに濡れた低い声だった。
 気圧されたのか、比留川は一瞬怯んだ。けれどそれは本当に一瞬で、彼の顔は再び舐めきった相手に向けるへらへら顔に戻る。

「まあね。だって四年前、薫子ちゃん自身はそんなに怒ってなかったでしょ?」
「……おめでたいですね、頭。呆れます」
「厳しいなぁ。あれからボク、かなり反省しちゃってさ、真っ当に生きるって決めたんだ。今度こそ薫子ちゃ……斎賀さんのこと、絶対裏切らないよ?」

 気色が悪い。四年前に自分の落ち度で破談になった相手に、こうも馴れ馴れしく、それも夜に待ち伏せしてまで声をかけてくるその思考回路が理解できない。
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