旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「私、もう結婚してますが」
「ええっ、そうなんだ? それってまたお父様のご紹介で?」

 無意識なのかわざとなのか、無神経な質問が続き、ますます苛立ちが募る。
 苛立った気持ちを、爪でざりざりと直に引っ掻かれたような不快感があった。「違います」と返しつつも苦々しさが抜けない。

 父の紹介ではない。でも、身内の紹介に代わりはない。
 嘲笑われているみたいだ。舌打ちしたい気分に駆られながら、私はなんとか返事を吐き出す。

「あなたには関係ありません」
「あ、当たり? ねぇどんな奴なの? 顔は? 年収は? ていうかじゃあなんで薫子ちゃんってここに帰ってきてるわけ? 婿取ったってこと?」
「通報しますよ」

 下世話な問いかけにうんざりして、話を遮るように短く告げる。
 瞬間、比留川の顔からそれまでの薄ら笑いが掻き消えた。

(……なに?)

 外灯が生む薄い光の下で、比留川の目が異様にギラギラして見える。
 急に空気が変わった気がして気圧される。その頃になってから、この状況って結構危なくないか、と私はやっと思い至る。
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