旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 さあ、とひと息に血の気が引いていく。
 強烈な眩暈に視界が揺れ、それ以降はうまく声を出せなくなる。

「仲間が警察に捕まっちゃってさ。実家からも縁切られかけてるし、もうお前ん家から巻きあげるくらいしか思いつかなくて」

 お前、という雑な呼び方に一瞬息が止まる。
 車に乗せられて首都高を移動している今、私には一切の逃げ場がない。命ごと、この男にまるまる握られているようなものだ。

 せめて平静を保たなければ、と深く息を吸って震えを抑えつけた、そのときだった。

 遠くからサイレンの音が聞こえてきて、はっと意識が耳に集中する。
 比留川の機嫌を窺い、露骨に振り返るのは避けたものの、助手席側のサイドミラーから後方の道路の様子が見えた。

 赤い回転ランプが目に留まる。
 パトカーだ。横には白バイも見える。

(助かる……かも)

 声もなく、胸の内で安堵を噛み締める。
 先ほど、比留川は『仲間が警察に捕まった』と言った。この男自身にも逮捕状が出ていたとしてもおかしくない。だとしたら、この男に対して取られているのは、単なる連れ去り犯への対応ではない。私の想像よりも遥かに大がかりな人員配置がなされている可能性もある。
< 207 / 244 >

この作品をシェア

pagetop