旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 まだ安心できない。できないけれど、祈るような思いが滲み出たせいか、分かりやすく顔が歪んでしまう。
 間を置かず、隣の運転席から派手な舌打ちが聞こえてきて、ぎくりと背筋が強張った。

「クソが……どこから情報漏れてんだよ斎賀のババアか? ……いや、おいまさかお前の旦那って、」

 焦りに呑まれた様子で、比留川はアクセルを踏み込んでスピードを上げ、急な加速に恐怖を煽られた私は堪らず固く目を瞑る。
 車は間もなくICに差しかかろうとしていた。ゲートに近づけば近づくほど、その先に待機する数台のパトカーと警察官の姿がより鮮明に見えてくる。

「早すぎんだろ対応……なにしたんだよテメェの母親はよ!?」
「つ、通報はしてないはずです、そもそもこれってあなたのための包囲なんじゃ……きゃっ!?」

 ゲートの直前で急ハンドルを切り、ほぼ同時に急ブレーキまでかけた比留川の運転は、すでに常軌を逸していた。
 震えが止まらなくなる。耳を劈くほどの悲鳴が迸るかと思ったのに、腕で頭を守るように抱えた私の口から零れたのは「ひ」という細い声だけだ。
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