旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「そんなに見つめられると照れる」
「和永さんの顔、好きだなって思って」
「……顔……」
「あっ、顔だけがって意味ではないですもちろん」

 コミュニケーション不足による誤解はもうこりごりだったから、私は慌てて弁解する。そうしているうちに腰を抱き寄せられ、あ、とつい声が漏れた。
 触れられた肌がぞくりと震える。感触を確かめるように腰を撫でるあなたの指の動きは緩慢で、それこそが昨晩の情事の記憶を刺激する。奥にまだあなたが入り込んでいるみたいな生々しい感覚に囚われ、目覚めたばかりの身体の芯が急速に熱くなっていく。
 腰を擦りながら、私の頭を胸に抱き込んだあなたは、耳に直接声を吹き込んでくる。

「じゃあ他にはどこが好きなんだ。教えてくれ」
「え」
「俺は君のことをまだまだなにも知らない。だから全部言葉にしてほしい、齟齬は潰したいんだ徹底的に」

 今日に至るまでの苦い経験を踏まえてか、あなたの言葉はそこはかとなく重い。
 少し掠れた低い声をひと息に注がれ、たちまち耳を焼かれてしまった私は、あなたの胸にますます深く顔を埋めるしかなくなる。

「み、耳元で喋らないで……まとまらなくなっちゃう……」

 顔を上げられないまま、硬い腕にそっと触れる。
< 223 / 244 >

この作品をシェア

pagetop