旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「あとはどこが好きなんだ? 教えてくれ、全部」
「ねぇ恥ずかしいですもう……つ、次で最後……」

 羞恥に悶える私とは対照的に、あなたの口調は珍しく弾んでいる。
 なんだか意地悪だ。人差し指を伸ばし、私はその先端をあなたの唇に這わせた。

「……ここ……」

 起きてから、今が一番顔が熱い気がしてならなかった。
 昨晩、溢れるほどに愛を囁いてくれた、私の名前を呼んでくれた、そして身体中に口づけを降らせてくれたあなたの唇――我ながら弱々しい声で囁いてから、ふる、と口端が震えてしまう。

 薄いのにやわらかな唇が、間を置かず微かに開き、触れた私の指を咥え込んだ。
 反射的に引きかけた私の手首は、そのときにはすでにあなたの指に囚われた後。

「なんだそれ。可愛すぎる」

 指を舐めるあなたの赤い舌がひどく扇情的に見えて、くらりとした。
 ぐ、と背を抱き寄せられた私の身体は、簡単にあなたの肌と密着し、同時に唇と唇が重なる。
 触れるだけの浅いキスはすぐさま深いそれに変わり、ちゅ、ちゅ、と蕩けた音を立てて繰り返される。昨晩もこの唇に陥落した。キスも、言葉も、私がほしいものを全部くれた、あなたの優しい唇。
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