旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 明らかに腰を引いて私から距離を取っているらしきあなたのそれへ、蕩けるような口づけの最中、私はそろりと指を伸ばす。
 硬いそれの先に指が触れた途端、あなたはぶるりと身を強張らせ、キスを中断してしまった。

「……っ、こら」

 さらに腰を引いたあなたにたしなめられる。それでも懲りずに、私はあなたが引いた分だけ身を寄せる。
 キスに蕩けさせられたのは唇だけではなかった。遠慮がちに目を泳がせたあなたの胸元に、私はそっと額を押しつける。

「でもすごく苦しそうです、……い、一回、だけなら」

 もう目を合わせてはいられなかった。
 自分からこんなふうに誘うなんて、と強烈な羞恥に襲われる。けれど、また昨日の夜みたいに情熱的に奪われたいと期待しているのも本当で、その期待をうまくごまかしきれない。
 深く愛される喜びを思い出した腰が震え、堪らず脚を擦り寄せてしまう。昨晩あなたを受け入れたそこが、ひく、と切なく疼く。

「……君は」

 朝からはしたない誘いをしかけたことを叱られるのかも、と緊張が走ったものの、あなたはなかなか続きを口にしない。
 はぁ、と臓腑から絞り出すような溜息が耳を掠め、居た堪れなくなる。やっぱり今のはなかったことに、と切り出そうとしたその矢先、横向きであなたに向き合っていた身体が傾いだ。
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