旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
     *


「そういえば、離婚届って今どこにありますか?」

 入浴を済ませて髪を乾かし、それから温め直してもらった遅めの朝食をとって、食後にはコーヒーまで用意してもらった。
 今朝の和永さんは本当に至れり尽くせりで、あれもこれもと支度から片づけまで手を焼いてくれている。

 昨晩たっぷり愛を注がれた身体はまだ少し重く、片づけくらいはと立ち上がろうとしたけれど、私がそれを切り出す瞬間を予測していたかのようなタイミングでコーヒーを振る舞われた。
 結局、それきり立ち上がるきっかけを失ってしまった。今日は私になにもさせない、という和永さんの強い意思をひしひしと感じる。

 コーヒーに口をつける。適度な涼しさが保たれたリビングの中、むしろ淹れたてのホットコーヒーは優しく喉を通ってくれる。ひと口、またひと口と運びながら、思わず安堵の吐息が零れた。
 その安堵の中でうっかり口をついて出たのが、離婚届の所在を尋ねる質問だ。尋ねるや否や、和永さんは皿を片づける手を止め、分かりやすく固まってしまった。
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