旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「細、切れ……」
遅れて鸚鵡返ししてしまう。
夫側が記載する欄は、当たり前とばかりにいまだ空欄だ。書面の端を、私は指先が白くなるほど強く摘む。
「実は俺もこれは持っていたくないし、かといって君に持っていてほしくもない」
溜息交じりのげんなりした顔で告げる和永さんを見ていたら、真剣な話をしている最中に失礼だけれど、ついまた噴き出してしまいそうになる。
すっかり呪物めいた扱いをされている離婚届をちらりと見下ろし、私は笑いを噛み殺しながら返事をする。
「それはそうですよね。用意した私が言うのもなんですけど、今は私も同じ気持ちです」
「だろう? なら今ふたりで一緒に、二度と使えないようにこの場で処分したほうが良くないか?」
ふたりで一緒に、この場で。
確かにそれが一番後腐れのない手段な気がして、薄く開いた私の唇から賛同の声が漏れる。
「そうかも……」
うん、と頷いた和永さんの顔が、今まで見た彼のどの顔よりも晴れやかに見え、私もつられて笑ってしまう。
「じゃあ、せーの、で破りましょうか」
「そうだな、……じゃあ行くぞ、」
せーの、とふたり分の声、そこにビリリと紙の破れる音が重なる。
遅れて鸚鵡返ししてしまう。
夫側が記載する欄は、当たり前とばかりにいまだ空欄だ。書面の端を、私は指先が白くなるほど強く摘む。
「実は俺もこれは持っていたくないし、かといって君に持っていてほしくもない」
溜息交じりのげんなりした顔で告げる和永さんを見ていたら、真剣な話をしている最中に失礼だけれど、ついまた噴き出してしまいそうになる。
すっかり呪物めいた扱いをされている離婚届をちらりと見下ろし、私は笑いを噛み殺しながら返事をする。
「それはそうですよね。用意した私が言うのもなんですけど、今は私も同じ気持ちです」
「だろう? なら今ふたりで一緒に、二度と使えないようにこの場で処分したほうが良くないか?」
ふたりで一緒に、この場で。
確かにそれが一番後腐れのない手段な気がして、薄く開いた私の唇から賛同の声が漏れる。
「そうかも……」
うん、と頷いた和永さんの顔が、今まで見た彼のどの顔よりも晴れやかに見え、私もつられて笑ってしまう。
「じゃあ、せーの、で破りましょうか」
「そうだな、……じゃあ行くぞ、」
せーの、とふたり分の声、そこにビリリと紙の破れる音が重なる。