旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 細切れという言葉を選んだ和永さんは、その発言に違わず、半分に破っただけでは足りずにさらに半分、また半分と、言葉の通りに用紙を細かく破いていく。私も負けじと残り半分をさらに半分に、また半分に破いて、そして。

 細かな残骸が床に積もるさまが、カーテン越しの明るい日差しに照らされている。妙にきらきらして見えて、私は思わず目を細めた。
 愛のない結婚生活のお守り代わりにと区役所からもらってきて以来、常に化粧机の引き出しに忍ばせていたそれは今、世界で一番きらきら光る残骸に見える。

 一年、私を日に日に追い詰めていた憂鬱、不安、傷ついた気分。
 そういうものごと全部細切れになって、光って、舞って、ああ、と笑いながら涙が零れた。

「はぁ……胸のつかえが取れました」
「うん。俺も」
「床、片づけちゃわないと」
「待ってくれ、もう少しだけ余韻に浸ってたい」
「ふふ。なんですかそれ」

 笑うあなたの胸に、私はそっと手を伸ばす。
 朝、信じられないほど高鳴っていたあなたの胸は、今も私が思う以上に弾んでいた。そのことが堪らなく嬉しくて、私の目尻からは涙が止まらなくなる。
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