旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「私の家族にもちゃんと話しておきます。叔父には……そうですね、私が〝浪費三昧の我儘女だった〟とでも伝えてもらえましたら。私も話を合わせますし、それなら和永さんのお仕事に悪い影響は出ないかと」
「っ、言えるわけないだろうそんなこと!」
努めて冷静にと意識して続けていた言葉が、叫ぶような彼の声に遮られる。
男性の大きな声に慣れていない身体が、意図せずびくりと跳ねる。その瞬間、ソファの上に置かれた紙袋の中身に目が留まった。
……花だ。
思わず目を見開いてしまう。
ラッピングの紙に綺麗に包まれたそれは、赤とピンクを基調とした薔薇の花束に見えた。
朝、和永さんは花屋にいた。店員の女性とやり取りしていた彼の表情は、見るからに不機嫌そうだったけれど、今となってみれば焦りにまみれていたようにも思えてくる。
どれほど卑屈に考えても、この花束が私宛ではない可能性はほぼゼロだ。
では朝、和永さんがあの花屋にいたのは、私に渡す花を用意するためだった?
(え……と、どうしよう、なにそれ)
瞬きが止まらなくなる。
朝に花屋で見かけたときに和永さんがこれを購入したのなら、それは彼が帰宅するよりも前の話だ。つまり、彼がこの離婚届の存在を知るよりも前。
その場合、和永さんは、私の離婚の意思を知るよりも先にこの花束を用意してくれていたということになる。
「っ、言えるわけないだろうそんなこと!」
努めて冷静にと意識して続けていた言葉が、叫ぶような彼の声に遮られる。
男性の大きな声に慣れていない身体が、意図せずびくりと跳ねる。その瞬間、ソファの上に置かれた紙袋の中身に目が留まった。
……花だ。
思わず目を見開いてしまう。
ラッピングの紙に綺麗に包まれたそれは、赤とピンクを基調とした薔薇の花束に見えた。
朝、和永さんは花屋にいた。店員の女性とやり取りしていた彼の表情は、見るからに不機嫌そうだったけれど、今となってみれば焦りにまみれていたようにも思えてくる。
どれほど卑屈に考えても、この花束が私宛ではない可能性はほぼゼロだ。
では朝、和永さんがあの花屋にいたのは、私に渡す花を用意するためだった?
(え……と、どうしよう、なにそれ)
瞬きが止まらなくなる。
朝に花屋で見かけたときに和永さんがこれを購入したのなら、それは彼が帰宅するよりも前の話だ。つまり、彼がこの離婚届の存在を知るよりも前。
その場合、和永さんは、私の離婚の意思を知るよりも先にこの花束を用意してくれていたということになる。