旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
好きになったからといって別れる必要まではなくないか、傍に置いてもらったままでいいじゃないか、別にこの気持ちに応えてほしいと我儘を言っているわけではない――そういうふうに簡単に揺らぐ。
それこそが、和永さんの嫌がっている〝期待〟であって、私たち夫婦が夫婦であり続けるために避けなければならない私の我儘でしかないのに。
「……そうか」
返事とも相槌ともつかない、独り言めいた声を落とした和永さんの顔は、まるで傷ついているとでも言いたげだ。
そんな顔はしないでいてほしかった。するなと言われた期待を、すぐにもしてしまいそうになる。
「あの、じゃあ私、部屋に戻りますので」
半ば逃げながら告げたものの、背を向けた瞬間に手を取られてしまう。分かりやすく指が跳ね、長い指に目を留めたままで私は瞬きを繰り返す。
今、和永さんがどんな顔で私の手を取っているのか、実際に自分の目で確認する勇気は出なかった。放してください、と伝えるべく開いた口が声を放つよりも早く、和永さんが口を開く。
「待ってくれ。次の休みを教えてほしい」
「……私の、ですか?」
「ああ」
まっすぐに私を見つめたきり、和永さんは頷いてみせた。
それこそが、和永さんの嫌がっている〝期待〟であって、私たち夫婦が夫婦であり続けるために避けなければならない私の我儘でしかないのに。
「……そうか」
返事とも相槌ともつかない、独り言めいた声を落とした和永さんの顔は、まるで傷ついているとでも言いたげだ。
そんな顔はしないでいてほしかった。するなと言われた期待を、すぐにもしてしまいそうになる。
「あの、じゃあ私、部屋に戻りますので」
半ば逃げながら告げたものの、背を向けた瞬間に手を取られてしまう。分かりやすく指が跳ね、長い指に目を留めたままで私は瞬きを繰り返す。
今、和永さんがどんな顔で私の手を取っているのか、実際に自分の目で確認する勇気は出なかった。放してください、と伝えるべく開いた口が声を放つよりも早く、和永さんが口を開く。
「待ってくれ。次の休みを教えてほしい」
「……私の、ですか?」
「ああ」
まっすぐに私を見つめたきり、和永さんは頷いてみせた。