旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 ……断るに断れなかっただけなのでは、と思う。
 叔父の勢いに押されるままこのお見合いを実現させてしまったのは、きっと良くなかった。私がなんとか頑張って断るべきだったのかもしれない。

 機嫌良く私の長所をあげつらっては笑い声をあげる母も母だ。
 叔父がこのお見合いを打診してきた当初、母は明らかに気の乗らない態度で話を聞いていた。母がその調子だったから私も油断していた。きっとなかったことになるだろう、と楽観視していた。それなのに。
 叔父は一体、いつの間に母をここまで乗り気にさせたのか……元々仲の良い姉弟ではあるけれど、私にはふたりの気分の乗り方がいまだによく分からない。

「じゃあ薫子、あとはしっかりね!」
「あ……はい」
「ここのお庭、今すっごく綺麗なの~! ふたりでゆ~っくり歩いてらっしゃいな!!」

 あはははは、と豪快に笑って席を立った母に、さも当然とばかりに叔父も続く。
 ふたりの背を、私は内心で溜息をつきながら見送るしかなかった。
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