旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「っ、あ……」

 鏡の中、真っ先に目に留まったのは、あれこれ悩んで決めた服でも首元で淡く輝くネックレスでもなかった。浮かれて頬を紅潮させた自分の顔だった。
 鏡に映った自分が、見る間に表情を失っていく。
 花柄のワンピースでも動きやすいパンツスタイルでも変わらない。私を浮かれさせているのは、服そのものではなく〝和永さんとの初めてのデート〟だ。

 数日前に離婚を切り出した女の顔にはとても見えなくて、くらりと眩暈がした。

(そもそも、なんで)

 ――なんで離婚したがってるんだっけ、私。

 表情が欠けた自分の顔を鏡越しに見つめながら、そんな疑問が浮かぶ。
 いけない、と慌てて鏡から目を逸らし、急いでメイクを始める。考えるにしても、これから出かけようとしている今は、きっと正しいタイミングではない。

 携帯が鳴り出したのは、落ち着かないまま施していたメイクがちょうど終わった頃だった。
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